エアバンド入門(基礎用語編)

飛行機・航空管制の話

皆さんは、エアバンドを聞いたことがありますか?

エアバンドとは、直訳すると「航空機用周波数帯」という意味なのですが、ここでは航空無線のことを言います。

航空無線は、パイロットと航空管制官がやり取りをする無線で、このやり取りがないと飛行機を安全に飛ばせません。

この航空無線は、エアバンドレシーバー(無線機)を持っていれば、誰でも聞くことが出来ます。

※ただし、傍受した通信の内容を漏らしたり、窃用することは電波法で禁じられています。

今回は、そんな航空無線に使われている用語などについて説明していこうと思います。

目次

そもそも航空無線でなにを話している?

そもそも、航空無線では、どのような会話がされているのでしょうか。

航空無線は、飛行機と、進む方向(方位)、飛ぶ高さ(高度)、スピード、地上の走行ルートや他機との位置関係などについてやり取りしています。

これにより、安全かつ円滑な運航を実現しています。

例えば、航空管制官が、方位120度、スピード280ノットで飛行中の“ANA1980便”に対して、進行方向を方位90度に、スピードを240ノットに減速するように指示を出す場合、下のようになります。

“All Nippon 1980” Turn left heading090. Reduce speed to 240knot.
(“オールニッポンワンナイナーエイトゼロ” ターンレフトヘディングゼロナイナーゼロ リデューススピードトゥトゥーフォーゼロノッツ)

日本語に訳すと、
「ANA1980便 方位90度へ左旋回、240ノットに減速して飛行。」という感じです。

これは、ほんの一部にしか過ぎませんが、まあこんな感じのやり取りをしています。

また、ここの例にはありませんが、一文字のアルファベットは、“A”をアルファといったり“B”をブラボーと言ったりします。

これをフォネティックコードと言います。

次は、このフォネティックコードについて説明していきます。


フォネティックコード

先程、少し書きましたが、航空管制には、独特な言い回しがあります。

特に、一文字のアルファベットはBとDやMとNのように聞き間違いやすいため、このフォネティックコードが使われています。

フォネティックコードの一覧を見てみましょう。

文字フォネティックコード
AAlfa(アルファ)
BBravo(ブラボー)
CCharlie(チャーリー)
DDelta(デルタ)
EEcho(エコー)
FFoxtrot(フォックストロット)
GGolf(ゴルフ)
HHotel(ホテル)
IIndia(インディア)
JJuliett(ジュリエット)
KKilo(キロ)
LLima(リマ)
MMike(マイク)
NNovember(ノベンバー)
OOsecar(オスカー)
PPapa(パパ)
QQuebec(ケベック)
RRomeo(ロメオ)
SSierra(シエラ)
TTango(タンゴ)
UUniform(ユニフォーム)
VVictor(ビクター)
WWiskey(ウィスキー)
XX-Rey(エックスレイ)
YYankee(ヤンキー)
ZZulu(ズールー)

上記が、アルファベットのフォネティックコード一覧です。
このようにすれば、BとDはブラボーとデルタ、MとNはマイクとノベンバーというように、発音の似ているアルファベットでも間違いなく伝えることが出来ます。

また、数字もフォネティックコードを使います。

数字フォネティックコード
0ZE-RO(ゼロ)
1WUN(ワン)
2TOO(トゥー)
3TREE(トゥリー)
4FOW-er(フォウアー)
5FIFE(ファイフ)
6SIX(シックス)
7SEV-en(セブン)
8AIT(エイト)
9NIN-er(ナイナー)
.DAY-SEE-MAL(デシマル)
100HUN-dred(ハンドレッド)
1000TOU-SAND(タウザンド)

上記が数字のフォネティックコードです。

基本的には、通常の発音と似ていますが、パイロットの母国語によっては、発音しにくい音もあります。

ですので、管制の際は聞き間違いを防ぐために、数字もフォネティックコードを使用しています。

あと、豆知識として、デシマルは管制の中で略される場合もあります。(周波数118.1「ワンワンエイトデシマルワン」を「ワンワンエイトワン」など)

次は、この周波数に関することと、デシマルを略してよい理由を説明していきます。

エアバンドの周波数

航空無線の周波数は、民間機向けに「VHF(117.975~137MHz)」、軍用機向けに「UHF(222~253.8/275~322MHz)」を使っています。

先程、少し書きましたが、デシマル(.)を略していい理由は、
周波数は、使用できる範囲が決まっており、全て3ケタ目のあとにデシマルが入ると決まっているからです。

そのため、略しても問題ないのですね。

周波数の割り当て

周波数は、各管制所・管制席ごとに割り当てられています。

また、羽田空港や成田空港のような大きな空港になると、同じ管制席でも、複数の周波数が割り当てられています。

各管制所・管制席(管制機関)について

まず、管制機関の一覧と各機関の関係を見ていきましょう。

では、上の図を基に、各機関の説明をしていきます。

Tower タワー(飛行場管制所) <管制塔>

ここでは、離着陸の管制を行います。離陸機への離陸許可、着陸機への着陸許可など、離着陸に関するコントロールを行います。

タワーは、グラウンドやデリバリーの業務を兼ねることも可能です。
※航空機の数が多ければ多いほど、業務を分担します。

Ground グラウンド(地上管制席) <管制塔>

ここでは、搭乗口から滑走路まで、滑走路から搭乗口までの地上走行のルート指示などを行います。

グラウンドは、デリバリーの業務を兼ねることも可能です。

Delivery デリバリー(管制承認伝達席)

ここでは、行先・使用滑走路・離陸後の飛行ルート・巡航高度など、運行に必要な情報の確認を行います。

Radar レーダー(ターミナルレーダー管制所)<レーダー>

ここでは、特定のエリアの空港(飛行場)に関わる空域を飛行する航空機のレーダー管制を主に行います。

エリアによって、業務の分担の方法や規定は変わってきますが、アプローチやディパーチャーの業務を兼ねることが出来ます。

Approach アプローチ(入域管制席) <レーダー>

ここでは、到着機が空港の管制の管轄域に入って、着陸に向けて高度を下げ、タワーに引き継ぐまでの間、管制を行います。

Departure ディパーチャー(出域管制席)<レーダー>

ここでは、離陸後、空港の管制の管轄域を出るまでの間、管制を行います。

Ground Controlled Approach(着陸誘導管制所)<レーダー>

GCAは、レーダーを使用して、航空機のファイナルアプローチ(最終進入)のサポートをします。

この席は、ファイナルコントローラーと言います。

役割としては、「ILS(Instrument Landing System){計器着陸装置}」とほとんど同じなため、ほとんどの空港には、このGCAはありません。

ですが、軍用機など、ILSの機器を搭載するスペースのない航空機が多く飛来する飛行場では、このGCAを行っていることがあります。

※現在、日本国内の旅客機が離発着する空港でGCAを行っているのは、那覇空港だけのようです。(間違ってたらすみません)
※自衛隊の基地や米軍基地などでは、かなりの割合で行われています。

Control コントロール{航空交通管制部}(管制区管制所)<レーダー>

ここでは、各空港の空域やターミナルレーダーエリア以外を飛行している飛行機の管制を行います。

航空交通管制部は、単体のレーダー管制の施設となります。
航空交通管制部は、札幌(Sapporo)所沢(Tokyo)福岡(Fukuoka)神戸(Kobe)の4か所で、それぞれに日本の空域を割り振り、管制を行っています。

所沢にあるTokyo Control

中はこのようになっています。

このように、レーダー画面が並んでおり、管制官はレーダー画面を見ながら管制を行います。

番外編  lamp Control ランプコントロール

成田空港では、成田国際空港株式会社によりランプコントロールという席が運用されています。

これは、駐機場(搭乗ゲート)周辺の「ランプエリア」と呼ばれるところを通る航空機と車輌のコントロールを行う席です。

通常、羽田などの同程度の規模の空港では、グラウンド管制が担当する仕事ですが、成田空港では、これを別にすることで、管制官が地上管制に集中できるなどのメリットがあります。

※成田空港のランプコントロールは、研修を受けた成田国際空港株式会社の社員が行っていて、国交省所属の航空管制官(通常の航空管制官)ではないそうです。

コールサイン

航空無線は、同じ周波数で通信している飛行機がたくさんいるので、私たちが普段している電話のように突然喋りだすと、どの機に対する指示なのかがわかりません。

そのため、一言ごとに、相手の名前を言い、誰に対する指示かをわかるようにしています。

このように、無線で呼ぶ際に使う名前のことを「コールサイン」と言います。

このコールサインは、各航空会社ごとに決まっており、「航空会社名+便名の数字」となります。

例えば、「ANA321便」の場合、「All Nippon Tree Two One」という風になります。

また、各管制機関にも、パイロットから呼びかける際のコールサインがあります。

管制機関のコールサインは、「空港名+管制所名or管制席名」となり、航空交通管制部は、「航空交通管制部名+Control」という風になります。

例えば、羽田空港の地上管制を呼ぶ際は、「Tokyo Ground」となり、東京航空交通管制部を呼ぶ際は、「Tokyo Control」という風になります。

まとめ

今回は、ここまでです。

いかがでしたでしょうか?

航空無線と聞くと、英語ばかりで、意味が分からないと思うかもしれませんが、ちゃんと1つ1つの用語の意味を理解すれば、割と聞き取れるようになります。

また、どのような管制の機関があるのかを理解すれば、航空交通の事情の複雑さや、さまざまな難しさがよりわかると思います。

今後、より実践的な解説もしていけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※紹介した用語の中には、つづりが間違っているものもあるかもしれません。
参考程度に見て頂ければと思います。

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